お、お嬢様って…


私はそんなタイプじゃないのに。


「女将の田中さんにはね、俺が子どもの頃から本当にお世話になってて…昔はよく家族で来ていたんだ」


思い出深く語る祐誠さん、嬉しそう。


「お坊ちゃまは、それはそれは可愛かったんですよ。頭もお顔も良くて、礼儀正しくて。あんなに小さかったお坊ちゃまが…こんなに立派な社長さんになられて。しかも、初めて女性をお連れになられて…とても感慨深いです」


「第2の母みたいな感じだ…女将さんは。ただ、その『お坊ちゃま』はもう止めてくれないか」


少し照れた顔で言う。


「あら、私にとってはお坊ちゃまはいつまでもお坊ちゃまですよ。少しおしゃべりが過ぎましたね。さあさ、お部屋にご案内致しましょう」


私達は女将さんや出迎えてくれた方々に一礼して、仲居さんに着いていった。


通されたのは、1番見晴らしの良い最高級のお部屋だった。