「慧さん、私…」


目の前にいるのは雫ちゃんじゃない。


「私、慧さんのことが好きです! 付き合ってもらえませんか?」


キラキラした目で俺を見てるのは、果穂ちゃんだ。


「ごめんね…果穂ちゃんの気持ちには応えられないから」


もう、夜の9時を回ってる。


果穂ちゃんに呼び出されてやってきた誰もいない小さな公園。


遊具はすべり台とシーソーしかない。


「どうしてですか? 慧さんが雫さんのことを好きなのはわかってます。だけど、私…雫さんより絶対に慧さんのこと愛せます。めいっぱい大事にできます」


真っ暗闇の中、薄明かりの電灯と月の光に照らされて、果穂ちゃんが言った。


「雫ちゃんには…好きな人がいるんだ」


思わず言ってしまった。


「え? そうなんですか?」


「ああ…」


俺は小声でつぶやいた。


「だったら…だったら余計に」