「話…あるんだよね。聞くよ、全部話して…」


私は、その言葉に甘えるように話し始めた。


「ご飯…誘ってもらったんだけど、一緒には行けないんだ。私、好きな人がいるから」


「うん、そうだよね。わかってたけど、改めて聞くとちょっと気持ちがグラつくな…」


「慧君には本当にいろいろ支えてもらった。なのに、ごめんね…」


「ううん、そんなことは気にするなよ。雫ちゃんが笑っていられるならそれでいいからさ。俺も自分のこと…いろいろ考えてるから。だから…」


「慧君?」


「俺、北海道に行く」


「えっ!?」


「前から誘われてたんだ。なかなか決心がつかなくてさ。でも、やっと気持ちが固まったよ。北海道での仕事、頑張ってみようと思う。俺も頑張るから、雫ちゃんも頑張って。あっ、ごめん、電話入ったから切るね…また」


慧君、北海道に行くんだ…


そっか…


いつも当たり前みたいに近くにいたのに、何だかちょっと…心に穴が開いたような気がした。


慧君も希良君も、そうやっていつかは私の知らない人生を歩むんだ。


私は…うん、そんな2人を素直に応援したい。


そして、自分自身も1番大切な人と、新しい人生を歩んでいきたい…って、心からそう思った。