「許すなんて…あんこさんのパンはみんなのものだから。ダメだなんて言わないよ」


「ありがとう、良かった。あのさ…いつか、あの人と…長野の星空を見にいってよ。本当にすごく綺麗だから。雫さん、感動して泣いてしまわないように気をつけてね。じゃあね、また!」


溢れた涙を手で拭う希良君の、何ともいえない笑顔が…


私の胸に切なく残った。


しばらくその場に立ちすくんで、そして、重苦しい足取りでマンションへと向かった。


私は、自分の気持ちに正直に向き合っていくって決めた。


だから…強くならなくちゃ。


慧君にも今のそのままの思いを伝えようと、急遽、スマホを出した。


「慧君、ごめんね、今、大丈夫かな?」


「うん。待ってたよ、お疲れ様」


「慧君もお疲れ様」