その言葉に目頭を熱くし、前田さんはメガネを外してハンカチで押さえた。


情がない人間なんて…


そんなこと全然ない。


それどころか、人の何倍も相手への思いやりを持ってる人なんだ。


祐誠さん、すごいよ。


「社長は、美味しいものは絶対になくしてはいけないし、真面目に生きていれば必ず誰かが認めてくれる。そう言って私の肩を叩いてくれたんです。榊社長のおかげで、うちは店を潰さずに済みました」


「本当に…良かったです。とても素敵なお話ですね」


何だか胸がいっぱいになった。


「父もそれからしばらくして元気になり、店に出れるまでに回復しました。今は、母と親戚、従業員も入れてみんなで頑張ってます。私は…社長に恩返しがしたくて、家族に送り出されてここに来ました。ちゃんと入社試験も受けて合格して。秘書として社長にお仕えすることができて本当に感謝しているんです」


笑顔いっぱいの前田さんを見て、私も涙を堪えられなかった。


優しい恩を受け、今度は前田さんが祐誠さんに恩返しがしたくて秘書となり、イベントスタッフになってる。


祐誠さんの溢れる情に、私はどうしようもないくらい心を動かされて仕方なかった。