いっぱいいっぱい泣いたとしても、好きな人への想いなんてそう簡単に消せるものじゃない。


その気持ち、痛いほどわかる。


でも…ごめん。


本当に…ごめん。


慧君には、ちゃんと自分の答えを出してから、本当の気持ちを必ず伝えるから。


だから、あと少しだけ待って…


心の中の私の願いは、きっと今の果穂ちゃんに届くことはない。


ただ私が憎くて…許せないよね。


どうしてあげることもできずに立ちすくんでいたら、あんこさんは、


「大丈夫だから、先に帰りな」


って、ニコッと微笑んでくれた。


私の気持ちをほぐすかのように、無理に優しい顔をしてくれたんだ。


私は、あんこさんに頭を下げて、果穂ちゃんには何も声をかけずにそのまま店を出た。


果穂ちゃんの切ない泣き声は…


『杏』の自動ドアが閉まるまで、悲しく私の耳に響いた。