「こんばんは」


「入って」


優しくドアが閉まる。


この部屋で、2度目の2人だけの時間。


「今日のリクエスト、本当に私のパンで良かったんですか?」


「ああ」


あれから祐誠さんと1度だけ電話で話した。


パンの注文。


毎週月曜日はあんこさんが作るパンを会社に届けてほしい、ただ、夜に自宅に届ける時は、


『雫が焼くパンが食べたい』


って、そう言われて戸惑った。


私のパンなんて、あんこさんと慧君以外には食べてもらったことなかったし、もちろん最初は断った。


でも、どうしても…って言われて。


あんこさんも『絶対に作った方がいい!』って言って『杏』のキッチンを貸してくれた。


だから、今日、私はクロワッサンを焼いて、手作りのイチゴジャムと共に祐誠さんに届けた。


どんな反応をされるかすごくドキドキする。


祐誠さんは1口食べてから言った。


「美味しい…」


ん? ちょっと…


この反応は何?


いつもよりテンション低くない?