あなたの声が聞きたくて

「ねぇ、あいつ誰?」

席に着くと、大輝が声をかけてきた。


「あぁ、朝バス停まで走ってたら、突然目の前に現れた。」

そう告げると、大輝は声をあげて笑い始めた。


「あはは、何それ」

「だから、走ってたら前に見えて、道路にハンカチが落ちてたから、彼女が落としたのかもって思って声かけただけ。」

「ふ〜ん。陽翔、もう彼女作ったのかと思った。」

「んなわけねぇだろ」


俺が大輝とそんな話をしていると、それまで黙っていた蒼汰が口を開いた。

「でもさ、あの子、なんか変じゃない?」


あぁ、それは俺も思ったよ。

耳聞こえない、話せないんじゃないかって。

でも、だからなんなんだよって感じ。


「話しかけてもリアクションねぇし、話さねぇし、なんかそういうのあんのかもな」

俺がそう言うと、蒼汰はなるほどね、と納得した様子だった。


「なになに、どういうこと?」

しかし、大輝はまだ話が掴めていないようだった。

「だから、そういう障害なのかなって」


「なるほどね。てか、オレ障害者は無理だわ。」