あなたの声が聞きたくて

俺は講義室に入った時、自分の目を疑った。

そこに、朝出会った女がいたのだ。

事務員から資料を受け取った後、一緒に来た友達と席を探す。

後ろの方がいいよな、なんて話していると、高校からの友達である大輝があの女のいる列を歩き始めた。

彼女の前にたどり着くと、俺は足を止めた。

しかし、彼女は資料に夢中になっていて俺の存在に気づいていない。

俺の後ろにいたもう1人の友達、蒼汰に何やってんだよと声をかけられたが、俺は朝みたいに彼女の肩を叩いていた。

俺が名前を書くと、彼女も自分の名前を教えてくれた。

姫野楓葉、か。

覚えておこう。


蒼汰がしびれを切らしだしたため、楓葉にはよろしく、とだけ伝えてその場を後にした。