おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~


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シルヴィアの部屋の隣に位置する控えの間でドレスに着替えるのも慣れてきた4日目。
リサの目はシルヴィアやエマが何があったのか聞くのを憚るほどに真っ赤になっていたが、なんとかタオルで目元を冷やしメイクを施してもらう。

昨夜は部屋に帰ると、このまま干からびてしまうのではないかと思うほど涙を流した。枕に顔を埋め声を殺し、ただひたすらに泣いた。どれだけそうしていたかは定かではないが、小窓から見える空が白んできた頃にはうとうとと浅い眠りについたらしい。

子供の頃の夢を見た。小さい頃からシルヴィアはリサを家族のように扱ってくれていた。それは今も変わらない。

「体調が悪いなら少し休んでてもいいのよ」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
「もう。リサはすぐ無理をするんだから心配だわ」

リサは侍女としてシルヴィアの身の回りのお世話をする役目ではあったものの、精神的にはシルヴィアの方が遥かに成熟していて、シルヴィアにとってリサは同い年の妹のように思ってくれているのを理解している。

幼い頃の夢を見たことで様々な過去が思い起こされ、リサはやはり彼女の幸せを邪魔するわけにはいかないと1人気を引き締め直した。