抱きしめられたまま思ってもみなかった賛辞を与えられ、リサは顔から火が出るほど恥ずかしかった。
「そ…っ、やめてください、当然のことをしただけです」
「君が言う『当然のこと』を出来ない人間がどれほどいるか。国を支えていく上で俺が1番大切だと思うことを当然だと言い切る君に、今俺がどれほど焦がれているか…」
背中に回った腕の力が1度ぎゅっと強まった後に緩められる。しかし与えられた言葉の威力に、嬉しさよりも照れ臭さや恥ずかしさが勝ってしまい顔を上げられない。
それでも、リサはなんとなく引っかかりを覚えて俯いたまま今の言葉を頭の中で反芻する。
『国を支えていく上で俺が1番大切だと思うことを当然だと言い切る君に、今俺がどれほど焦がれているか…』
そうだ、彼は『国を支えていく』と言った。こんな言い回しはまるで……。
「ジルって、本物の王子様みたい…」
つい本音が口をついて出てしまった。彼が本当は従者であるということは知らないふりをしていたはずなのに。
「…何を今更」
呆れたように笑ったジルベールにリサは一抹の不安を覚える。身体にピリっとした緊張が走った。
ギシッと固まってしまったリサに訝しげな顔をする彼の反応に、リサの疑惑がどんどん膨らんでいく。



