微笑ましく見ていたが、石畳のちょっとした段差に躓き、リサとジルベールの目の前で転んでしまった。
慌てて少女の保護者を目で探したが、まだよちよち歩きのもう1人の子供に手一杯の母親らしき女性は、娘が転んでしまったことに気が付いていない様子。リサはカップを手に持ったまま少女に駆け寄った。
むくりと起き上がった女の子は少し膝を擦りむいた程度で怪我は大したことなかったが、転んだ拍子に落としてしまったカップを見て、そのつぶらな瞳からぽろぽろと涙を零した。
「いちごじゅーしゅ…なくなっちゃったぁ…」
悲しげな声を出して泣く女の子に寄り添い、空になってしまったコップを拾うと、リサは自分の持っていたいちごジュースを泣いている女の子の目線に入るように見せた。
「私はリサ。あなたのお名前は?」
「…っひっく。え、エリス、4さい」
目の前に現れたいちごジュースとリサを交互に見ながら、少女はエリスと名乗った。
「4歳かぁ。もうお姉さんだね。ねぇエリス。私ね、パンを食べすぎていちごジュースを飲めなくなってしまったの。誰か貰ってくれる子を探していたんだけど」
「え?」
「エリス、貰ってくれる?」
「いいの?!」
「もちろん。お腹いっぱいでもう一口も飲めないの」
お腹をぽんぽんと叩いてみせると、先程まで泣いていたエリスはしゃっくりをしながらリサを不思議そうに見上げた。
「リサおねえちゃん、くいしんぼうなの?ジュースものめないくらいパンたべちゃったの?」
「ふふ、そうなの。せっかくおいしそうないちごジュースなのにね」



