「騙すような形になってしまったのは、あの、本当にすみません。でも、シルヴィア様は」
「わかった」
リサの言葉を遮るように、ジルベールは人差し指を彼女の唇に押し当てた。柔らかく当てられる指の感触に驚き、言葉は止まったものの、鼓動は反対に大きく早くなる。
「リサの姫を思う気持ちはわかった」
仕方ないとでも言いたげな苦笑だけど、眉間に皺がなくなってほっとする。
「悪意がないということも理解した。問い詰めるような真似をして悪かった」
「そ、そんなこと…」
「だがラヴァンディエ王国の王子である俺に偽りを告げた罪は重い。よってリサに罰を言い渡す」
「…ば、罰?」
恐ろしい事態になったらどうしようと身体を竦ませる。こんな展開は当然絵本には出てきておらず、リサはどう対処すべきかわからない。
やはりシルヴィアに相談するべきだっただろうかと何度目かわからない後悔が脳裏をよぎる。
しかし、リサに与えられた罰は、彼女の思っていたような恐ろしいものではなかった。
「明日、俺と一緒に街に出ること。もちろん本物の姫や護衛はなしで2人きりだ。リサにこの街を案内してほしい」
ジルベールが言い渡した罰の意味を理解するのに、リサは何度も瞬きを繰り返し、頭と心が彼の言わんとしていることを察すると、ぶわっと顔が熱くなる。



