おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~


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城の最上階である5階に位置する謁見の間で、侍従が声を張り上げて来賓を紹介する。

なんとか王子様の情報を少しでも手に入れようと気持ちを張り詰めて従者の声に集中しようと考えていたのに、梨沙は目の前の男性から目が離せないまま、その場で身体も思考も固まってしまった。


「ラヴァンディエ王国、ジルベール=ラヴァンディエ王子」


梨沙の視線を占領する彼の名が告げられる。

金色の髪、深緑色の瞳。赤い軍服のような燕尾服に金色の肩章。

昨日馬車でここまで送ってくれたジルベールが、あのバラ園で梨沙を抱きしめてくれたジルが、ラヴァンディエの王子として公爵に頭を下げている。


(そんな……。彼も絵本の登場人物だったなんて!)


その後ろに控えているのは、昨日一緒に馬車に乗っていた穏やかそうな男性。彼はローランと呼ばれていた。

長身で整った顔立ちの彼らが豪華絢爛な大広間に並ぶと、1枚の絵画のように美しく見る者を魅了する力がある。

誰がどう見てもジルベールが王子様で、後ろに控えているローランが従者。