そんなシルヴィアのことをリサは自分のこと以上に大切に思っていて、彼女の笑顔のためならば何でもする。そんな侍女だった。梨沙はおぼろげな記憶を頼りにそんなことを思った。
「お嬢様、リサ、そろそろお時間ですよ」
エマの一言で、梨沙の緊張は否が応にも高まっていく。
「シ…シルヴィア様。私、どうしたら…」
「大丈夫よ!堂々としてればバレっこないんだから!」
自信満々に言い放つシルヴィアとは対照的に、梨沙は不安で仕方ない。
昨日はどうせ夢だからとあまり真剣に考えていなかったが、自分が侍女のリサとしてこの絵本の世界に転生したと考えると、この入れ替わりの作戦は失敗するわけにいかないというプレッシャーがあった。
この入れ替わりが成功するかで、絵本の通りのハッピーエンドが待っているかどうかが決まる。
早々にバレるわけにはいかない。この世界はハッピーエンドでなくてはならないのだ。
ドレスの胸の前でぎゅっと拳を握りしめ、梨沙は1人気合いを入れた。



