エマに化粧をしてもらい、仕上げに1度も染めたことのない真っ黒で艶のある髪を隠すようにブロンドのウィッグを被れば、偽物の姫の出来上がり。
ドレッサーの鏡の中の自分を見て、思わず感嘆のため息が漏れる。
こんなに着飾ったことは生まれて初めてで、恥ずかしいと思いながらちょっとワクワクしている自分がいるのを梨沙は自覚していた。
絵本が大好きだった梨沙は、自分が今まさにそのお姫様になっているのだと心が躍った。
隣で着替えていたシルヴィアをちらりと横目で見ると、そこにはメイド服に身を包んでいても隠しきれない美貌と品の良さを湛えた正真正銘のお姫様の姿。
「まぁリサ!とても似合うわ!」
梨沙を見て花が綻ぶように笑うシルヴィアは、あっと何かと思いついた表情をすると、可愛らしくわざとらしい咳払いをした。
「じゃなくて。とてもお綺麗です、シルヴィア様」
片足を下げて腰を落としてそう言う彼女は、イタズラが楽しくてしょうがない子供のように無邪気な顔をしている。
(なんて可愛い人なんだろう)
シルヴィアは公爵家の姫だというのに、偉ぶったところがひとつもない。
それどころか自らメイド服に袖を通し、このドレスにはこっちのネックレスの方がと梨沙の世話を焼く真似をしだす。



