「旦那様から聞いたよ。面白そうなことするねぇ」

梨沙の戸惑いに気が付かないのか、可笑しそうに笑いながら自分のぶんのついでといって梨沙の朝食も一緒に準備してくれる。

頭の奥の片隅の記憶を引っ張り出し、彼女がエマという名前で、ハウスメイドを束ねるメイド頭だということが思い出された。

裏表のなさそうな笑顔に大きな笑い声。
話して30分も経っていないのに、梨沙はエマが大好きになってしまった。もう成人した息子が3人もいるという彼女から溢れる母性がそうさせるのかもしれない。


そこからはあれよあれよという間に事は進んでいく。

食事を済ませて簡易的な風呂に入り、姫と入れ替わるためにシルヴィアとともに衣装部屋へ行った。

メイド服を脱ぎコルセットを付け、エマに背中から締め上げられる。
押し出された内臓が口から出そうなほどキツく紐を締められ、お姫様はあの美しい微笑みの裏でこんな苦しい思いをしているのかと初めて知った。

スカート部分を膨らませるために何枚もペチコートを重ね、ようやくドレスを着る。そのドレスがまた重い。

桜の花びらのような薄いピンク色をしたドレスに銀色の糸で刺繍が施してあり、一見して分かりにくいが近くで見ると物凄く豪華な造りだ。

さらに首と耳、手首や指にまで豪華できらびやかな装飾品が付けられ、ドレスとアクセサリーの重さで身動きが取りづらい。