おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~


「体調は?疲れていないか?」
「はい、大丈夫です。みんなちゃんと気を使って座らせてくれるんですよ。ほんとにいい子達ばっかりです」
「それには同意するが、あのテオドールはリサの腹に俺の子がいると知っても未だに諦めないのか」

大きく膨んだリサのお腹を撫でながら、不服そうな顔で嘆息するジルベールに苦笑する。

「テオだって何も本気じゃないですからね」
「なぜそう言い切れる?」
「まだ13歳ですよ?いくつ離れてると思ってるんですか」

子供相手に何を真剣に言っているのかと可笑しくなったリサが笑う。
すると訝しげに目を細めたジルベールは、芝居掛かったように大きくため息を吐いた。

「リサは相変わらず自分の魅力を分かっていない」
「え?」
「年齢など関係ない。男なら誰だって君に惹かれてしまう」

この3年で背中にかかるほど伸びた黒髪を一房掬うと、それを口元へ持っていく。

「この美しい黒髪も、黒目がちな瞳も、控えめなのに明るい笑顔も。リサの全てが魅力的だ」
「ジル…」
「子を宿してさらに美しくなった。1人で王宮の外に出せば、職務が手につかないほど…」
「わかりましたから!お願いです、もうやめてください…」

夫の止まらない賛辞に居たたまれなくなったリサは涙目で懇願すると、ジルベールはくすりと笑ってリサの顔を覗き込んだ。