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古い大きな教会を一部改修して作った孤児院は、そこで生活する者だけでなく、地域の子供達の遊び場になっている。
円形状の天井と尖塔アーチが特徴的なゴシック調の外観。石畳の中庭は広く、中央には使われていない大きな井戸がそのままにしてある。
孤児院の表にある庭は季節の花が咲き誇り、手入れのために王宮から専属の庭師が派遣されている。
3年前に王太子妃の発案で教会の改修と共に小さなバラ園が作られ、その手入れだけは孤児院の子供たちに任されている。
馬車から下りて大きな門を1人歩いて入っていくと、「リサ様ー!」と早速姿を見つけた子供たちに大きな声で名前を呼ばれた。
「リサ!今年も綺麗に咲きそうだぞ!」
リサが孤児院に着くなり元気いっぱい報告してきたテオドールは今年14歳になる。
もっと年嵩の子もいる中で、やんちゃで活発な彼がリーダーのようにこの孤児院の子供たちをまとめていた。
「テオ!王太子妃様かリサ様って呼ばなきゃダメなんだよ!」
「そうだよ。リサ様は王宮に住んでるんだよ」
口々に他の子供たちに責められるテオドールだが、そんなこと物ともせずに笑ってみせる。
「だってリサがいいって言ったんだ。な、リサ?」
出会った頃はまだ少年だったテオドールは、いつの間にかリサの身長を越して声も低くなった。
それでもやはり可愛いには違いなく、リサはうんと頷いてやった。



