今自分はこの世界で生きているため、『めでたしめでたし』で終わりはしない。きっとこの先、困難だってたくさんあるだろう。
でも、彼と一緒なら乗り越えていける。
リサは出会って数日のジルベールを同じ熱量で見つめ返し、そう確信していた。
ジルベールが愛してくれている。
側にいていいと言ってくれる。彼の側が、リサの居場所になる。
「リサ」
「はい」
「キス、したい?してほしい?」
片腕はリサの腰に回したまま反対の手で頬を包み、親指でぷっくりとした唇を柔らかく撫でる。
熱っぽく吐息だけで囁くように聞かれた言葉の意味を頭で理解する前に、リサは自ら目の前の唇に自分のそれを押し当てた。
初めてのリサからのキスに驚いたシルベールだが、お返しとばかりに少々強引に唇を奪い、深く口付ける。
苦しくて唇が離れた隙に大きく息を吸い込むと、柑橘系の爽やかな香りがした。油断するとすぐに涙が浮かびそうなほど幸せで、リサは施されるキスに夢中になる。
ようやく想いが通じ合った恋人たちが何度も互いの名前を呼び合いながらキスを交わすのを、夜風に揺れる篝火が照らしていた。



