「何より、あなたは私を選んでくれた。一緒に来いと言ってくれた」
「リサ」
「私の望みはひとつだけ。あなたの側にいたい。出来ることなら…」
「出来ることなら?」
続きを促されるが、言葉にするのを躊躇う。
今更だが、ジルベールは大国であるラヴァンディエ王国の王座を継ぐかも知れない。ローランがシルヴィアのためにこの国に婿入りするとなれば、弟のジルベールが王位継承権の筆頭になることは間違いない。
そんな彼に言える願いではないと、この期に及んで尻込みしてしまう。
リサがずっと憧れてきたもの。欲しいと望み続けていたもの。
それは、自分だけの家族。
大国の王ともなれば、王妃は然るべき身分のあるどこかの国の姫を娶り、世継ぎを多く作るために側室もとらなくてはいけないのではないか。
そう考えると、ジルベールと家族になりたいだなんてとても言えそうになかった。面倒だと嫌われたくなくて臆病になり、いつも以上に言葉が出なくなる。
「リサ」
「はい」
「父を騙すように来てしまったから、明日の夜、兄と一度国に戻る」
「…はい」
ジルベールはリサの不安を消し去るようにぎゅっと強く抱きしめる。



