ただ見たくなかった。
シルヴィアとジルベールが2人で幸せそうに見つめ合う姿を。
「姫に妬いたか?」
リサの心の内など全てお見通しだというように問いかけるジルベールが可笑しそうに笑っているのが悔しくて、リサは口を尖らせる。
相手は憧れのお姫様であり、自分を救ってくれた恩人であり、畏れ多いが大好きな姉とも慕うシルヴィアだったのだ。どれほど苦しかったか。笑い事では済まされない。
恨めしい思いを込めて上目遣いに睨むと、そんな表情さえも嬉しいとばかりにジルベールは微笑みを深める。
「そうだったら嬉しいと思っただけだ。リサが素直に嫉妬する心を見せてくれたらと」
「素直に…?」
「初めて会った日にここで話した時、君の心に触れられたと思ったが、俺が王子だと知った途端遠くなった気がした」
ジルベールは身分差を気にしていると思っているだろうが、リサはもちろんそれだけではない。
ここが元いた世界で見ていた絵本の中で、自分の恋する相手はジルベールではないと思っていたなどと説明出来るはずもない。
リサは黙って瞳を伏せた。



