その話を聞いて呆然とするリサに、シルヴィアは言った。
『たとえ従者だったとしても、ローランは私にとってたったひとりの王子様だから』と。
その言葉を聞いて、リサはハッとした。
(あれ?その台詞、もしかして……)
そうだ。ずっと絵本のストーリーから外れてしまったと自責の念に駆られていたリサだが、シルヴィアの視点で見てみれば、何も変わっていないことに気付く。
シルヴィアは侍女のリサと入れ替わってメイド姿で従者姿のローランと出会い、ローランは従者の恰好のままシルヴィアに求愛。
身分差があると知りつつも彼の愛を受け入れると、実は彼は王子様だった。
まさにリサのお気に入りの絵本『私だけの王子様』のストーリーそのままではないか。
「兄もシルヴィア姫とうまくいったと聞き、あとは父と公爵の説得だけだと話し合っていた。それが急に君が城を出ていくと言い出して、俺がどれだけ焦ったか」
「あ、あれは…!だって、元々ジルはシルヴィア様の花婿候補で…、私がいたら邪魔になると思って…」
もごもごと言い訳を口にする。
半分本当で、半分嘘だった。
出ていこうとした理由はそれだけではない。



