「だからね、私はもう大丈夫。リサも自分のことだけを考えていいの。…ふふ、出ていくなんて許さないってこの前言ったばかりなのにね。本当は結婚後も側にいてほしいのが本音だけど…。そうもいかないでしょ?」
「シルヴィア様……」
彼女は気が付いているんだろうか。
城を出ていこうと考えていたことに。ジルベールに惹かれてしまっていることに。
まさか。そんな素振りは見せていないはずだった。
リサは血の気が引いていく頭で何を言ったらいいのかを必死に考えるが、結局この場に相応しい言葉が思いつかない。
そんな彼女の様子を見たシルヴィアは心配げな様子でリサの肩を抱き、しっかりと目を見合わせて子供に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「いい?リサは自分の気持ちに正直になればいいの。何も心配はいらないわ」
シルヴィアの意図していることはわからない。
ただ自分を心配してくれているのはわかる。長年仕えてきた主人であるシルヴィア姫がどれだけ素晴らしい女性なのか、リサは10年以上間近で見てきたのだ。
そんな彼女が結婚を決意した。
これは喜ばしいことだった。例えその相手が自分の想い人だとしても。
「さぁ行きましょう。お父様達がお待ちかねよ」



