リサが泣いていれば、女性が苦手であるにも関わらず涙を拭ってくれ、居場所がないと零せば自分が居場所になると言ってくれた。
2人で城下町に出た時には自ら買い物をしてくれたり、酔っぱらいから守ってくれたり、少し見ていただけの指輪を覚えていて贈ってくれたり。
エスコートも振る舞いも紳士的で、見つめる眼差しはいつも熱っぽくドキドキさせられる。
何よりも、ジルベールはリサの言葉を待ってくれた。
主張が苦手なリサを理解し、それを蔑ろにしないで話すのを待ってくれた。
さりげない気遣いも、初対面の日に一緒に来いと言う強引な優しさも、全部が魅力的でリサの心を囚えて離してくれない。
そしてまた、シルヴィアもこれ以上ないほど素敵な女性だった。
公爵家の姫であるにも関わらず、6歳で路頭に迷っていたリサを拾い、引き取って一緒に暮らせるように父親である公爵に頼んでくれた。
以来居心地が悪くならないようにと仕事をさせてくれたのも、シルヴィアの配慮だったとリサは分かっていた。
レスピナードでは黒髪の人間は珍しい。きっとどこかの異民族の血が混じっているであろう自分を側に置くことで、シルヴィアが周囲の人間からどう思われるのかが不安だった。
城の使用人らは愛らしく懸命に働くリサを皆が好いていたが、他の者がそうとは限らない。
それで花婿候補が来る前に出ていこうとしたリサを、シルヴィアはなおも引き止めてくれた。
こんなに素敵な女性は世界中探してもいないに違いないし、互いのことを知り合えば惹かれ合わないわけがない。
まさにおとぎ話のお姫様と王子様でお似合いの2人。



