「ジルベール王子を、どう思っていますか?」
ローランとは馬車の中でメイド姿で顔を合わせている。
しかし今リサはシルヴィアに扮装しており、メイクも恰好も髪の色さえも違う。1度しか本来のリサの姿を見たことがないローランが、目の前の女がまさかあの時のメイドだとは気付かないだろう。
彼は自分をシルヴィア姫だと疑わずに接しているに違いない。
ジルベールはどうやらこちらが入れ替わっていることを従者であるローランには伝えていないらしいと察した。
「どう…というのは?」
リサは急にジルベールの話題が出て動揺する自分をなんとか抑え込まなくてはならなかった。
シルヴィアの恰好をして、おたおたと醜態を演じるわけにはいかない。
「生涯を共にするに相応しい男かどうかということです」
食い入るように真剣な眼差しでこちらを見据える様子に、彼はジルベールの従者として、主人の妃になるかもしれない姫の気持ちを聞いておきたいのだろうと理解した。
きっとローランもリサと同じように、仕える主人にはなんとしてでも幸せになってほしいと思っているのだろう。
しかし、シルヴィアの扮装をしているだけのリサには何も答えられなかった。罪悪感に胸が痛む。
ジルベールはとても素敵な男性だとリサは大声で伝えたかった。
王子という身分に驕らず偉ぶらず、自分に非があれば頭を下げられる人だった。



