午前中は何かと動き回り、ジルベールから話しかけられないように避け続けた。そのまま迎えた昼食会では彼の視線が気になり食事どころではなかった。
入れ替わりの初日以上に味の感じられない食事を済ませると、リサはジルベールが席を外したのを見計らって自らも席を立った。
ダイニングルームのある4階から赤絨毯の敷き詰められた階段を下りて居住区の3階の廊下を進むと、人目を避けるように2人きりでいたジルベールとシルヴィアを見かけた。
何を話しているのか声は聞こえなかったものの、2人は二言三言真剣な顔で話すと、シルヴィアが頬を赤らめ、ジルベールは控えめに微笑んでいた。
控えの間まで足早に歩いた。背中で扉を閉めると、なんとか平静を保とうと大きく深呼吸をする。
ここに来るまでに見た場面が在々と脳裏に蘇り、心臓がドキドキと音を立てていた。
やはり2人は結ばれる運命なのだ。
自分が邪魔さえしなければ、絵本の通り王子と姫は結ばれてハッピーエンド。みんなが幸せになれるはず。
(幸せになってほしいと、城を出ると決めたのは私…。なのに、どうしようもなく辛い…)
2人の微笑み合う姿を思い出すたび、身を切られるような切なさに喉の奥が詰まり、息が苦しくなっていく。
部屋の奥に置かれているソファに崩れるように腰を下ろし、自分の首にそっと手を当てた。
それでも呼吸は楽にはならない。ゆっくりと唾液を飲み下し、息をめいっぱい吐き出す。
このまま控えの間に引きこもっているわけにはいかない。塞ぎ込みそうになる気持ちを何とか立て直すために庭園へ出た。



