この恋はどこか諦めていた。この世界に魔法も、惚れ薬も、何もない。でも夏津樹は気付いた。恋を叶えるために相手に言わなければいけない呪文があるということを……。

「愛梨、俺から言わせて?」

夏津樹はなかなか言い出せない愛梨に微笑み、誰にも聞こえないようにそっと耳元で言う。

「好きだ。俺と付き合ってください」

人が使える唯一の魔法。それは、相手に想いを伝えるということ。この魔法のおかげで、人は人とつながっていける。