月が降る夜は

12月24日。
古本屋はクリスマスセールだった。カゴに積まれた小説は結構売れたし、謎におじいちゃん店主が人気だった。お客さんに聞いたら、サンタさんっぽいらしい、、。
「ハル!来ちゃった!」
ナツメが彼氏と一緒にやってきた。
「ナツメ、デート?笑」
「まあね。あ、これプレゼント!さっき買ったの。」
「え、ありがと。わたしも買ったんだけど、来るって思ってなくて、、。」
「全然いいよ笑 今度家行ってもいい?久々ハルの家行きたい。」
「もちろん。その時渡すね。」
「ありがと!」
二人を見送りながら、楽しそうな後ろ姿がすごくうらやましく感じた。
手をつないで、身長差がいい感じで、ナツメの笑い声がかわいくて、彼氏もすごくおしゃれで。
いつか私もそんなことできるのかなと考えたけれど、全く想像がつかなかった。
店に戻って、レジで店番。
先輩はまだバイトだろうか。
そういえばプレゼント。いろいろ頭がいっぱいで考えてなかった。
少し考えて、自分のいちばん好きな小説をあげることにした。
店主が厚意でくれた私の大好きな本。店限定のしおりをはさんでラッピングした。
雑と思われないように丁寧に。先輩っぽい濃いめの青いリボンで包んだ。
喜んでくれるかな。結構読み古してボロボロだが、先輩にすごく読んでほしかった。
月の世界と太陽の世界。世界が分けられている話。
それを主人公がひとつの世界にするという話。
夢中になって読んだ話だった。
バイト上がりまであと2時間。
店の外は綺麗なイルミネーションがキラキラと光っていた。
すると、ドアが開いた。
入ってきたのは、アキ先輩だった。
「え、なんで?」
「店長に頼み込んでさ、早く上がらせてもらった。」
「わざわざよかったのに。」
「俺がしたかっただけ。お前もうちょっとだろ?」
「う、うん。」
「じゃあそれまでここいていい?」
「いいよ。」
先輩は、レジの近くにギターケースを置いて、お客さん用の小さな椅子に腰を下ろした。
「今日は結構お客さん来たの?」
「んーいや、あんまりかな。常連さんはいろいろ弾きに来たりしたけど。」
「へえ、楽しそうだね。」
「お前も今度来いよ。いいギターがあるんだ。」
「弾きに行くね笑」
お客さんも落ち着いて、上がりまで1時間になった。
「ん?ハルちゃん、彼氏さんかい?」
「え、いや違いますよ笑 学校の先輩で。」
「お似合いなのに、、。これから予定かい?もうあと1時間くらいだし、今日は上がりでいいよ。」
「え、でも、、。」
「大丈夫大丈夫、バイト代のことだろ?笑」
「あ、、ありがとうございます!」
サンタ似の店主はウインクをして、店の裏に入っていった。
「いい店長だな。」
「うん。まって。準備する。」
「おう、待ってる。」
コートを羽織って、バッグにプレゼントを入れる。
「ごめん、おまたせ。」
「全然。どうしよっか。イルミでも見に行く?笑」
「ありきたりだね。笑」
「だよなあ。あ、行きたいとこあるんだけど、ついてきてもらってもいい?」
「全然いいよ。」
「ありがと。」
私たちは駅のほうへと向かった。

繁華街から少し外れた道へとやってきた。
私の好きなエモい雰囲気。
すると、先輩が急に止まった。
「ごめん、5分で戻るからちょい待ってて。」
「ん、わかった。」
先輩は自転車を止めて、雑居ビルへと入っていった。
ほんとに5分後、先輩は小さな紙袋を持って戻ってきた。
「おっけ、昨日のとこ行くか。」
「うん、行きたい。」
再び歩き出した。