とある町の隅の方にある小さな一軒家。その家ではパソコンと向き合って、ひたすらキーボードを叩く女性が暮らしている。

女性はぐっと体を伸ばしながら、壁にかけられた時計に目を移した。開けた窓から入ってきた風が、彼女の内側に巻かれた茶色の髪を揺らす。

「フィオナ、お疲れ様。進み具合はどう?」

そう言いながら部屋に入ってきた金髪に碧眼の男性の手にはお盆があり、そのお盆にはコーヒーとお茶が乗っていた。

「……後は、探偵が事件を解決するシーンを書くだけだよ」

男性からコーヒーを受け取ったミステリー小説家として活動している女性――フィオナ・カモミールは、そう言ってコーヒーに口を付ける。

「……執筆するのは良いけど、あまり無理したらダメだよ?」

フィオナがコーヒーを机に置き、執筆を始めようとするのを見た男性――エヴァン・カランコエは心配そうな顔でフィオナを見た。

「大丈夫」

フィオナは、どうでもいいと言いたげな顔でエヴァンを見るとすぐにパソコンに目を移す。

エヴァンは部屋に置かれている椅子に腰をかけると、執筆をするフィオナの様子を心配そうに見つめた。

(昔はもっと、感情が豊かだったのにな……)

お茶を一口飲み、エヴァンはそう思いながら昔のことを思い出す。