うつむいて返事を待つと、髪になにかをぐるりと巻かれた。

「・・・?」

「ほら」

リョウくんは、私の腕を引っ張って、近くのお店のショーウィンドウに姿を映した。

髪には茶色いリボンが巻かれ、頭のてっぺんできゅっと大きく結ばれていた。


(わっ・・・)


太いリボンでおさえられ、髪がすっきり見えている。

だいぶ印象が違うかも・・・。

「これならどう?」

「あ・・・えっと、このリボンは・・・」

「ああ、ほら、姉がやってるチョコレート屋の。食べたいって言ってたでしょ。だから今日買ってきたんだ」

リョウくんは、持っていた紙袋を広げ、中身を私に見せてくれた。

そこには、つい先ほどまでリボンがかかっていたであろう、チョコレートの箱が入っていた。

「この、リボン・・・」

「そう。意外なとこで役にたったね」

リョウくんが優しく笑う。

私もつられて、へへっと一緒に笑顔になった。

「恥ずかしくないよ。かわいいし、むしろ自慢で歩きたい」

「だからデートしてくれる?」と、リョウくんは照れくさそうに私に言った。

その気持ちがとても嬉しくて。

差し出された手を、私は「うん」と言ってきゅっと握った。



バッハスタイルも悪くはないかな?

・・・なんて、これはきっと、彼がかけた特別なリボンの魔法。

チョコレートの代わりに包まれた。

私の心は、甘い気持ちで満たされたんだ。



☆   ☆   ☆   E N D   ☆   ☆   ☆   




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