ノワールに異変が起こっている同時刻、メルキュールは自室のベッドに腰掛け、読書をしていた。読んでいるのは、シャルロットが閉じ込められ、前世で幼なじみであったノワールの書いた「小さな雪の天使」だ。

「やっぱり、前世でも今世でも、文才の塊だな」

そう呟きながら、メルキュールはページをめくっていく。変わらず、美しく繊細な文章に惹かれていく。その時だった。

メルキュールが手にしている本が光った。メルキュールは驚き、本を床に落としてしまう。本がパタパタと一人でに動き出し、メルキュールは警戒しながら杖を構えた。

「君は……」

本の中からゆっくりと現れたその存在に、メルキュールは言葉を失う。

メルキュールの目の前には、ボロボロに傷付いた倒したはずの男の子の物の怪がいた。