夏の花火があがる頃


 羽田空港に到着したと同時に、悠也の彼女が友人の翔と一緒に待ち構えていた。

 彼女は何も言わず、ただ泣きながら悠也の頬を叩いた。

 めぐみも悠也も何も言わなかった。

「もう、悠也なんかいらない」

 涙の跡を見せて、まるで能面のように表情を消した彼女が言い放った。

「修羅の道だって言ったろ」

 一緒にいた翔と呼ばれた男の人が悠也に言い放った。

 慎吾と付き合っている時に、一度だけ大衆居酒屋で飲んだことがある。

 慎吾と悠也と三人で一緒によくゲームをしたと言っていた。

 めぐみを睨みつけるように一瞥して、ふらふらと歩く彼女を宥めながら、彼は二人の元から去って行った。

「いいの?」

「何が?」

「彼女と別れて」

「この状況でそれを言うか」

「そっか……」

「しばらく一人でいるよ。いろいろ気持ちの整理をしたい」

「いいと思う」

「冷たい女」

「元気でね、悠也」

「めぐみもな」

「じゃあ……」

 足早にその場を去った。

 涙は出てこなかった。

 やらなくてはならないことが山積みだった。