夏の花火があがる頃

「……ごめん」

「……」

「ごめんね……悠也」

「謝るな、メンヘラ。お前なんか、もう嫌いだ」

「メンヘラって言うな、このストーカー」

 鼻をすすりながら、めぐみは少しだけ気持ちがスッキリしていることに気がついた。

 涙は未だに溢れてくるが、心の奥にあった嫌な重みが取れていた。

「……ブサイクな顔してんな」

「悠也だって、目真っ赤だよ」

「かっこ悪い……よな」

「うん」

「正直に言うな。気を使え。八年間俺はお前に気を使ったんだ」

「そこは……ありがとう」

 少しだけ昔に戻ったようだった。

 昔の悠也とめぐみの会話だった。

 こうやって軽口を叩きあいながら、慎吾が笑って幸せだった。

 ずっとあのままでいたかった。

 でも、もう無理だ。

 起こってしまったことは何も変えられない。

 その夜、ホテルでめぐみと悠也はセックスした。

 慈しむようなセックスだった。

 悠也の腕の中で、泣いた。

 悠也も泣いていた。言葉はなかった。

 慎吾がめぐみの中から少しずつ消えていくのを感じた。

 キスはしなかった。

 それだけは二人の暗黙の了解だった。

 この一夜でこの二人の縁が切れることを、互いに互いが理解した。

 何度身体を重ねただろうか。

 快楽よりも疲労感だけが残っていた。
 
 次の日、目が覚めて「東京へ帰るか」という悠也の言葉にめぐみはただ頷いた。