夏の花火があがる頃

 あの花は母のところへ届くのだろうか。

「……悠也。私、もう分からない」

「ちゃんと考えろよ。めぐみはどうしたいんだよ」

「どうしたいって言えない人間だっているんだよ……」

「言えないと思い込んでるだけだ。本当は言えるのに、言えないと思い込まされただけだよ。逃げるなよ、めぐみ。もういい加減にしろよ!」

「でも、私と関わって死んだ!お母さんも、慎吾も!どうしたいだなんて言えるわけない!自分と関わって、人が死んで、怖くない人間なんていないでしょ!」

 泣き喚きながら、めぐみは悠也の胸板を叩いた。

 ドンと鈍い音がした。

 悠也はいつも優しく、黙ってめぐみを受け入れてくれていた。

 こんな風に追い詰めることはなかった。

「でも、俺は死んでない。俺は少なくとも死なない。分からないけど、恋人いたんだろ?
あいつだって死んでないじゃないか!意味わからないんだよ」

「悠也なんかにこの気持ちわからないよ!周りの人間だってみんな私のせいって言う!私のお父さんだって、慎吾のお母さんだって、私が二人を殺したんだって言うんだよ!私は、逮捕されてないだけで、加害者なのに、普通の生活をしてる。恋人作ったり、楽しくデートしたり、未来のことを想像するたびに、罪悪感しか湧かないんだよ!」

 ずっと抱え込んでいた一言を吐き出してしまったことにめぐみは気がついた。

 慎吾も母親も、生きていて欲しかった。

 そうすれば、きっとこんな惨めで辛い思いをしなくて済んだのだ。

 怯える生活など縁がない生活ができたのだ。

「状況に酔いしれて、悲劇のヒロインぶって、バカなんじゃねえの?そこら辺のメンヘラと一緒じゃねえか!死ぬって決めたのはそいつらの選択だって言ってんだろ!いい加減にしろよ!このバカ女!」

「バカなのは悠也だってそうじゃん!一旦離れたのに、ストーカーみたくしつこく追いかけてきて、こんなバカなメンヘラ女なんてほっとけばいいのに!恋人だっているんでしょ!ずっと付き合ってる彼女いるんでしょ!そっち大事にしなよ!」

「お前のこと好きなんだよ!大学生の頃から!ほっとけるわけないだろ!ずっと大好きなんだよ!お前と慎吾が付き合ってるから、応援しようと思ってたんだ……こんなことになるなんて思うかよ……」

 しゃがみこんで、悠也が泣いた。

 まるで子供のような泣き方だった。

 めぐみも一緒に泣いた。