「それ、慎吾知ってるのか?」

「ううん。今、生まれて初めて言った」

「そうか……」

「引いた?」

「別に、今更だろ」

「慎吾とも話をしないとだよね。私が……殺しちゃったから」

 自白をすると、悠也は大きく首を横に振り、一冊のノートをカバンの中から取り出した。

「ごめん。出していいのかわからない。いいことなのかも分からない。めぐみを追い詰めるだけかもしれない。でも読め」

「……」

「あいつは自分で死ぬ気だった。それも、めぐみを道連れにして。だから、めぐみが殺したとは思わない」

「でも……」

 追い詰めたのは、めぐみだった。

 不安な慎吾の気持ちを解消することはできなかった。

「今回もずっとめぐみのことを考えてた。どうすれば治るのか、どうすれば立ち直るのか」

「……」

「でも分かんねえよ。俺もう分かんない。めぐみ。俺だって苦しいよ。あいつを殺す原因作ったのは、俺でもあるんだよ」

 悠也は今にも泣き出しそうな声色だった。

 ずっと気持ちを押し殺していたのは、めぐみだけではないのだ。

「悠也のせいじゃない……」

「俺だって、そう思いたい。でもやっぱり考える」

「飛び出したのは私なんだから……」

「だけど、そういう行為に走らせたのは慎吾だ。追い詰めさせたのは俺だ」

「……」

「もうさ、やめようぜ。こうやって自分たちの粗探しをして、状況に酔うのは」

「でも……」

「めぐみのお母さんも、慎吾も確かに死んだ。けれど、それは彼らの選択だ。めぐみは関係ない。俺たちは生きていかないといけないんだ。一生このままの状況でいるのは、俺は嫌だ。夏の度にめぐみを気にして、廃人のお前を心配する生活はもう嫌だ」

 放り投げた花束が波に乗って流れていく。

 ふよふよと漂うように、地平線の彼方へと流れていく。