夏の花火があがる頃


 お盆に入って、泣き腫らした顔のめぐみが家にやって来た。

 原因が、慎吾のことなのか、現実世界でのことなのか分からなかった。

 だが、彼女が泣くのは慎吾のことだけだと思うことにすると、些か冷静な気持ちになることができた。

「なあ、めぐみ」

「……」

「暇だし、旅行に行かないか?」

 苦肉の策だった。

 断られても、仕方ないと思ったが意外なことにめぐみからは「うん」と返事が返ってきた。

「本当に?」

「うん。行く」

 泣き腫らした目をこすり、彼女は言った。

「行きたいところがあるんだけど」

「どこ?」

「北海道」

 悠也の提案に、めぐみは心底驚いたような表情を浮かべた。

「え……」

「めぐみの生まれ故郷でしょ?俺行ってみたい。慎吾も連れて行こうぜ」

 慎吾の写真を出して、悠也はめぐみに「慎吾の旅費は俺が出す」と胸を張って見せた。

 自分でも白々しいなと思ったが、めぐみが少しでも元気になればいいなと思った。

「……」

「お前ら、ちゃんと話をしてないから、そんなことになってんだよ。場所変えて、少しリフレッシュしようぜ」

 大学時代、こうやってずっと悠也は二人の間に立っていた。

 写真の中の慎吾は笑っていた。