夏の花火があがる頃

 普通、そんな状況になってたら、家族は心配するもんじゃないのか?

 当たり前のように翔は言った。

「さあ?でも大学時代帰省してるのを見たことない。折り合いは良くなさそうだよな」

「うわあ。まじか。でもさ、悠也は家族になるわけにはいかないだろ」

「……家族になる気、あるよ」

「萌さんは?」

 翔は、萌と悠也が長く付き合っていることを知っている人物だ。

 彼女と何度か一緒に食事もしたことがある。

 萌が、悠也と結婚したがっているということも、彼は知っていた。

「別れる」

 その一言を聞いて、翔はとんでもない話を聞いたという表情を浮かべた。

「そこまでして、慎吾とその彼女に振り回される義務がどこにあるんだよ、悠也。この日記にかいてある慎吾の言葉は精神的におかしいし、その言葉をお前もその彼女も真に受ける必要はないんだ。自分の幸せをちゃんと考えろよ。彼女と一緒に進むのは、修羅の道だぞ。精神的な病気は、本人の強い気持ちと周りの辛抱強さが必要になってくるんだ。悠也、お前が抱える必要のないことなんだよ。だから彼女は、お前を気遣って、数年前消えたんだろ」 

 翔の言葉はもっともだと感じた。

 別に、悠也がいなくてもめぐみは生きてこれた。

 だが、めぐみと同じように、悠也も慎吾の呪縛から抜け出したかった。
 
 夜中に目が覚めて、電話がなるのではないかと不安にかられる瞬間がないと言えば嘘ではない。
「わかってるよ」

「いや、お前は、わかってないよ。実は、萌さんから相談受けてる。お前、変だよ」

 泣きそうな表情だった。

 翔は本気で心配してくれている。
 
 だが、めぐみをこのまま放置していくわけにはいかなかった。

「ごめんな。翔」

 めぐみの気持ちが少し理解できた気がした。

 当事者にしかわからないことだった。

 周りには、理解のできないことなのだ。

 彼女は、周りの気持ちも、壊れた心がどれだけ周りに心配をかけるかも分かった上で壊れ続けている。
 
 だから謝る。ずっと「ごめんね」と謝り続ける。