お願い、名前を呼んで。

「多分、俺の話をどこかで聞いてたんだろ。
で、何を言われたの?」

「隼人が木曜日から調子が悪かった事、それで帰りは白井さんがここまで送って、看病をした事、昨日の病院へも付き添った事。これって本当?」

「ほとんど嘘。でも言い方を捻じ曲げれば、そう言えなくもないかも。女って怖いな。」

「どういう意味?」

「木曜日から体調が悪かったのは、本当。帰りに送ってもらったのはさっき話した現場の人。白井さんは方向が同じだからって車に便乗しただけ。
それで帰り道のコンビニでお茶とかゼリーを代わりに買って来てくれたのが、白井さん。
金曜日に病院に付き添ってくれたのは、医務室の担当看護師さん。
白井さんは後から病院に勝手に来たけど、その頃には俺、体調戻ってたし、挨拶してその後は、優香を駅まで迎えに行っただろう。」

確かに言い換えれば、白井さんの言ってることも完全な嘘にはならない。

「白井さんの話術ってすごいね。」

「感心してる場合かよ。他には?」

「隼人のことを『隼人さん』って呼んでた。」

「少なくとも、俺は直接そう呼ばれたことは一度もない。もし、そう呼ばれたら、呼び方を変えてもらう。」

「他には?」

「ドクターストップが掛かっているのに、街の散策に出掛けるなんてあり得ないって。」

「確かに、それは誘った俺が軽率だった。」

「他には?」

「同僚の私がいると、隼人が気を遣ってゆっくり休めないから、今日、東京に帰った方がいいって。」

「それでもしかして、優香は帰るつもりだった?」

「うん、それもそうかと思って。」

「それは絶対に違う。俺は優香が居てくれたから元気になったんだ。昨日からずっと言ってるだろ。」

「そうだけど、白井さんに正論で詰められると、
何か、私が悪いことしてるのかなぁって。」

「あのさもし、優香が体調が悪くなった時に、俺が居たら邪魔?」

「ううん。私はそういう時だからこそ、隼人に側に居て欲しいと思う。」

「俺も同じだよ。だから、たとえ優香が今日帰るって言っても、俺は帰すつもりはないからな。」

「そうだね。私、馬鹿だった。」

「優香は誰の言葉を信じるの?」

「隼人。」

「よし、よく出来ました。優香さ、高い壺とか買わされないように気を付けろよ。俺、心配になって来た。」

「気を付ける。でも、話せて良かった。」

「いや、最初に話したのは俺だし。俺が話さなかったら、優香は黙って帰るつもりだっただろ。これからは、隠し事しないで気になる事があったら話せよ。それで喧嘩になったとしても、俺は絶対、どんな時も優香のことが好きだから。」

私はここに来て、隼人といっぱい話せてよかった。
藤田さんや仕事をフォローしてくれてるメンバーに感謝しかない。