お願い、名前を呼んで。

ぼんやり海を眺めていると、隼人が出て来た。
さっきの会話を知らない彼は楽しそうだ。

「お待たせ。さぁ、これからは二人の時間だから、楽しもうな。」

「あのね、隼人。今日のデート、やっぱりやめない?隼人は家で休んだ方がいいよ。」

「急にどうしたの?さっきまで、あんなに楽しみにしてたのに。」

「海を見てるうちに、隼人の体調を考えないで、
はしゃぎ過ぎた事を反省したの。だから、帰ろう?」

「俺はそんな説明じゃ納得出来ないけど、帰ってから、ちゃんと話をきくよ。」

私達は、無言のまま、隼人の家に戻った。

隼人がインスタントコーヒーを入れてくれて、テーブルに置いた。

「それで俺のいない間に何があったの?」

「何もないよ。」

「また、嘘を吐くのか?」

「またって何?」

「俺にはだいたいの想像がついてるんだけど、優香が話さないなら、俺が話そうか。」

「想像って?私、嘘なんて吐いたことないよ。」

「優香は白井さんに何か言われたんだろ。」

「何で?」

「あの人のしそうな事だから。俺も迂闊だったよな。事務所に入った時、普段から仲良くしてもらってる現場の人に、『可愛い彼女が駆けつけてくれたおかげで、元気になりました。』とか自慢なんてしたから。」

「それで白井さんは私を探して、外に出て来たのかな。」