お願い、名前を呼んで。

隼人がコンビニで買って来てくれたパンやおにぎりで朝食を済ますと、隼人が近くを案内してくれると言う。

「でも、大丈夫?無理しないでね。」

今週末の出勤はドクターストップもあって、流石に仕事には行けないらしい。

「だって、ずっと優香とここにいると俺が野獣になって、優香の身体が心配だから。それとも優香もそっちがいい?」

「やだ。隼人が大丈夫なら、私は隼人が今暮らしてる街を見てみたい。」

「まあ、俺も観光なんした事なくて、毎日、仕事場とここの往復しかしてないけどな。」

週末の朝、街が動き出す頃に私達も外に出掛けた。
隼人がこっちで借りているという車に乗って、初めてのデートにウキウキが止まらない。

「優香、楽しい?」

運転しながら、隼人が聞いてくる。

「うん、すっごく楽しい。」

「優香の仕事をしてる真剣な顔も、酔った時の甘い顔も、ベッドの中の魅力的な顔も、全部好きだけど、今みたいに笑ってる優香も好きだな。東京に戻ったら、いっぱいデートしような。」

隼人は、平気で恥ずかしくなる事をサラッと言う。
私は、まだそれに慣れない。

「恥ずかしい事言わないでよ。」

自分でも顔が紅くなっているのが分かる。

「あっ、その照れてる顔も好き。」

「だから、やめてよ!」

私はもう、顔を上げられない。
折角、綺麗な景色を楽しんでいたのに。

「あのさ、デートの前にちょっとだけ、事務所に寄っていい?今日、渡す予定の書類があるんだ。」

「いいけど、仕事に行ってもいいの?」

「少しぐらいなら大丈夫。」

「分かった。私は、周りの散策でもしてるから、
終わったら連絡して。」

「了解。すぐに済ませるから。」

隼人は、建設中のショッピングモールの近くの駐車場に車を停めて、ビルの中に消えて行った。