打合せが終わってクライアント企業を出る頃には、5時を過ぎていた。
駅に向かう途中、藤田さんが聞いて来た。

「野崎さん、この後どうする?直帰?それとも会社に戻る?」

「私は会社に戻ります。今日の修正点を見直しておきたいので。」

「そっか、僕は申し訳ないけど、失礼させてもらうね。たまには早く帰って、可愛い娘と過ごしたいし。」

「了解しました。今日は、藤田さんのおかげで上手くいって良かったです。ありがとうございました。」

「野崎さんもたまには彼氏とゆっくり過ごしたら?仕事頑張るのもいいけど。」

藤田さん、私が彼氏なんかいないこと知ってるくせに。
私達は、駅の改札で別れた。

藤田さんには、温かい家庭が待っている。

私に待っているのは、携帯の画面いっぱいに残る不在着信とメッセージ。

そして、私の帰る場所は、気を抜くことを許してはくれないオフィスという戦場だ。