お願い、名前を呼んで。

竹内君の住んでいる部屋は、備付けの家具があるだけの殺風景な部屋だった。

「ごめん、散らかってるし、何もないけど。優香が来る時は、ちゃんと掃除して、優香用の小物も準備しておこうと思ってたのに。」

「お邪魔します。そんなの気にしないで。」

私はこの雑然とし部屋に女の影も感じなくて、逆に安心する。

「それより、病人は早く寝て。私は適当にするから。」

竹内君は、素直にベッドに潜り込んだ。
1DKのマンションだから、寝室もリビングもなく、一緒の空間に居られる。

「優香、こっち来て。俺、優香のこと抱き締めたい。」

「病人なんだから、ダメだよ。」

「違うよ、優香の温もりを感じたいだけ。」

「あのさ、私達、喧嘩してなかった?こうやって話すのもあの日以来だよね。」

「そうだったかな。」

「藤田さんに酔っ払って、電話したんでしょ。」

「何で、それを知ってるの?」

竹内君が罰の悪そうな顔をする。

「藤田さんが『面倒な男だ。』って言ってたよ。」

「藤田さんって、案外、お喋りなんだな。て言うか、今、俺病人だから、優しくしてよ。その話は、元気になってからにしよ。」

竹内君がベッドに手招きする。
私は上着だけ脱いで、ベッドの横に座った。

竹内君が起き上がり、私の服を脱がそうとする。

「やめてよ、恥ずかしい。」

「服着てたら優香の体温を感じられないだろ。優香の裸はもう見てるんだから、今更、恥ずかしい
もないだろ。」

「だって、まだ明るいじゃない。分かった、自分で脱ぐから。」

私はベッドに潜り込むと、布団の中で服を脱いだ。

竹内君が私を抱き締める。

金曜日の夕方にこんなことになるなんて、夢にも思わなかった。

「優香、会いたかった。すっごく会いたかった。」

竹内君の腕に力が込もる。

「私も会いたかった。隼人の声が聞きたかった。」

隼人が上半身半分だけ起こし、私に熱くて甘いキスをする。

「優香、可愛すぎる。」

私達はお互いの体温を感じながら、安心感の中、
深い眠りについた。