その日の夜、竹内君からの電話はなかった。

最近は、プライベート携帯がニュースのチェックや買い物をするための道具と化していたのに、今は、ずっとその存在を確認し、常に近くに置いている。

人って変わるもんだなぁ。
自分の変化に感心してしまうぐらいだ。

夜の8時頃、竹内君から携帯へメッセージが届いた。
私はオフィスを出て駅に向かう途中だった。

『ごめん、今日電話出来ないかも。
今やっと会議が終わって、今から山積みの課題を片付け始めるところ。
何時になるか分からないから、今日は電話はやめておくわ。』

『気にしないで。それより仕事頑張ってね。
でも、あんまり無理しないでね。』

『俺は昨日の優香を思い出したら、まだまだ頑張れるよ。可愛かったもんなぁ。
家に帰ったら、キッチンの一番上の引き出しを開けてみて。じゃあ、おやすみ。』

私は急ぎ足で家に戻ると、荷物だけ置いて、キッチンの引出しを開けた。

そこにはメモが残っていた。

『優香へ
俺は昨日の優香より今日の優香が
もっと好きになった。
これからの会えない日も、
俺の気持ちは更新されていくと思う。
優香にもそうであって欲しいな。

早く会いたい。好きだよ、優香。
             隼人より』

キッチンでメモを持ったまま泣いた。
こんな事されたら、私の気持ちも更新されるに決まってる。
私もまだまだ頑張れるよ。