タクシーに乗って、私の家に向かう。

私の心臓は、バクバクし始める。
いくら酔ってても、いくら私でも、竹内君が家に来ることの意味ぐらい分かるから。

私達、同期なのかな?
それとも、それだけじゃなくなるのかな?

タクシーは、私の住むマンションの前で止まった。
竹内君が代金を支払ってくれて、私達は降りた。

私がマンションのオートロックキーを開けようとすると、竹内君が私の手を止めた。

「どうしたの?」

「あのさ、俺、この前ここへ来た時みたいには理性を保てないかもしれない。だから、先に言っておく。」

「何を?・・・前は何もなかったんだね。」

「やっぱり、優香覚えてなかったんだ・・・。」

「えっ、何となくは覚えてるよ。」

「あの夜の俺の我慢を返してくれよ。」

私には返す言葉が見つからない。
一体、何を言うつもりなんだろう。

「あのさ、俺、優香の部屋に入る前に、ちゃんと伝えたい事がある。」

「何かな。」

「俺は優香が好きだ。同期としてじゃなく、女の子として。一生懸命で思いやりがあって、すぐ泣く優香が好きなんだ。」

「ありがとう。」

「ありがとうじゃなくて。
優香は俺のこと、どう思ってる?」

「私も竹内君のことが好き。優しくて逞しくて、
いつも私を助けてくれて、安心させてくれる。
私も大好きだよ。」

竹内君が私を抱きしめる。
私は竹内君の腕の中で、彼を見上げようとする。

「お願い、見ないで。
聞いたのは俺だけど、恥ずかし過ぎるから。」

腕の隙間から見える竹内君の耳は真っ赤だった。

「じゃあ、俺達、付き合うってことでいい?
俺は、まだ向こうにいなくちゃいけないから、優香が辛い時、側にいられないかも知れないよ。今日みたいに駆けつけようとは思ってるけど。それでも、優香は大丈夫?」

「竹内君は、側に居なくても、私を助けてくれたし、いつも守ってくれてるよ。」

竹内君の腕に力が籠る。

「じゃあ、お願いがある。あの夜みたいに、優香も俺のこと『隼人』って呼んで。」

今度は私が真っ赤になる。

「・・・隼人。」

「もう一度。」

「隼人・・・。大好き。」

「それは反則。離れられなくなるだろ。このままじゃ、家に入れない。」

私達はやっとの思いで、一度離れると、オートロックの鍵を開けた。