「優香はいつも泣いてるな。」

「違うよ、泣いてないもん。竹内君が『泣くな。」って言ったから、泣いてないもん。」

「でも、今、泣いてるだろ。」

「それは竹内君がいるからだよ。竹内君だと安心して、涙が溢れてきちゃうの。」

私は、ヒクヒクなりながら一所懸命に話す。

「優香、酔ってる?」

「うん、酔ってるかも。久しぶりに飲んだから。
でも、何で?」

「だって、優香が素直で可愛いから。」

そう言うと、竹内君がぎゅっと抱きしめてくれた。

「気が済むまで泣いていいぞ。俺が守ってやるから。」

その言葉に留まりかけていた涙が、再び溢れ出す。

「あのさ、このまま聞いてくれる?俺、今日は、
優香とお祝いをしようと思ってたんだ。お洒落な店で、高級ワインとかでさ。」

「うん、ありがとう。」

「でも、無理だ。俺、早く優香と二人っきりになりたい。優香のこと、もっと甘やかしてあげたい。」

「私達、同期だよね。同期にそんなこと言っていいの?」

「あっ、優香、酔い冷めてきた?」

「うん、ちょっとね。泣いたら、冷静になって来た。でも、竹内君の腕の中はあったかくて、心地いい。」

「まだ、冷めてないな。じゃあ、優香の家に行っていい?」

「うん、いいよ。でも、私、この顔で電車に乗るの恥ずかしいかも。もうちょっと、待ってくれる?」

「待てない。だったら、タクシーに乗ればいいから。」

そう言うと、私達はタクシー乗り場に向かった。
もう、きっと竹内君はこの手を離さないだろう。