私は酔っているんだろうか。
地方にいる竹内君が、この駅にいるはずなんてないのに。

席に戻っていた藤田さんへ携帯を返しに行く。

「竹内、遂に来ちゃったか。ここは僕に任せて、早く行ってあげて。野崎さんのこと、一番祝ってあげたい奴が待ってるんだから。」

「あの、すみません。まだ事態が把握できてないんですけど、取り敢えず、行って来ます。途中で抜けてすみません。」

「ほら早く、こっそりね。気付かれると面倒なのもいるからさ。」

「ありがとうございます。」

私は、誰にも気付かれない様に自分の鞄を持って、部長から預かった封筒を藤田さんに託して、店を出た。

店を出ると、自然と小走りになる。
竹内君がここにいるなんて、信じられないけど、
私の心臓はドキドキして痛いぐらいに高鳴っていた。

駅に着いて辺りを見回す。
竹内君が見つけられない。

電話してみようとカバンの中の携帯を探すけど、
焦り過ぎて、手も震えて、上手く取り出せない。

お酒も入っているせいか、身体中の血液がぐるぐる回って、もう目眩すら起こしそうだ。

その時、腕を掴まれた。

見上げると、竹内君がそこに居た。
夢か現実か分からなくなる。

でも、腕には確かな感触がある。

自然と、涙が溢れ出す。

竹内君が一瞬、私を抱き寄せた。

「流石にここじゃまずいな。」

竹内君が、駅の隅にあるベンチへと私を引っ張っる。

握られた手が温かい。

人通りの少ないベンチの前で改めて、私は竹内君を見上げた。

もう、涙でぐしゃぐしゃになってしまった顔で。