オフィスを出ると、私は興奮を抑え切れない。

「山田部長、格好良すぎますよ!私、すっごくスッキリしました!本当にありがとうございました。」

私は二つ折りになるぐらいに頭を下げる。

「野崎さん、やめてよ。こんな所で恥ずかしいじゃないか。」

「だって、部長の言葉に感動したんです。私、この会社で頑張ってて、間違いじゃなかったって。」

「それは野崎さんや藤田君の頑張りのお陰だろう。僕だって、あんな立派な提案書がなければ、啖呵なんて切れなかったよ。こちらこそ、ありがとう。」

「いや、今日の部長は別格でしたよ。男の俺が惚れそうになりました。」

藤田さんも嬉しそうだ。

「やめてくれよ、男に惚れられても嬉しくないよ。ただ、皆んなにはクライアントの要望に応えても、自分達の価値を安く売ることだけはして欲しくないだけだ。」

私は改めて、その言葉に心がジーンとなった。

「でも、部長はあの内田さんとお知り合いだったんですね。それなら、教えてくれればよかったじゃないですか。」

「いや、あいつは昔から癖のある奴だったからな。俺もこんな所で会うとは思ってなかったよ。因縁だな。」

オフィスに戻ると、昼休みの時間なのに、メンバー皆んなが残っていた。
クライアントを出た時に、会社には電話で報告したのに。

皆んな、部長の武勇伝が聞きたくて残っていたらしい。
そこで今日の会議の顛末を話すと、大盛り上がりで、部長は胴上げでもされるんじゃないかって勢いだった。

竹内君には、今回のプレゼン成功の報告とお礼を
メールでしておいた。
本当は、電話で伝えたかったけど、仕事の邪魔になってはいけないと思ったから。

その日は、皆んないつも以上のスピードで仕事をこなし、定時にはオフィスを出れる準備を整えた。

「いつもこれぐらいのスピードで仕事をしてくれれば、助かるんだけどな。」

部長が嬉しそうに笑っていた。

「野崎さん、僕は別の接待があるから、今日は皆んなで楽しんで。これ、少ないけど。」

そう言って、封筒を渡してくれた。

「ありがとうございます。部長も、次回は必ず、参加してくださいね。」