お願い、名前を呼んで。

「僕は正直、野崎さんとこうやって一緒に仕事をするまでは、もっと淡々としてる人かと思ってた。」

私の印象って、やっぱりこうなんだ。

「子供の頃から落ち着いてるね。って言われてましたから。本当は小心者なんですけど。」

「でも、一緒に仕事をしてみて、すごく一生懸命で、皆んなのこともちゃんと考えられる思いやりのある人だと知ったんだ。
だから、この仕事も絶対成功させたいと思ってる。」

「ありがとうございます。私は藤田さんが教えてくれた『頼れる強さ』のおかげで、皆さんにこんなに助けてもらって、本当に感謝しています。」

「きっと、竹内はずっと前から、野崎さんのそういう素直で可愛いところを知ってたんだな。それが今回、大きなプロジェクトで皆んなに気付かれるって焦ってるだよ。」

「そんな訳ないですよ。私、もう竹内君と10年の
付き合いなんですよ。彼の女性の好みや元カノのことだって知ってますから。」

「竹内がモテることは否定はしないけど、結果として野崎さんを選んだってことは間違いないと思うよ。僕だって、竹内との付き合いは長いからね。あいつの性格も把握してるつもりだよ。」

「藤田さんは、どうして、今の奥さんと結婚しようと思ったんですか?藤田さんもモテてたと思いますけど。」

私は今しかないと思って、藤田さんにプライベートな質問をしてみた。

「うーん、そうだな。『この人となら喧嘩しても大丈夫。』って思えたからかな。喧嘩した後も、認め合えて笑い合えたら、ずっと一緒にいられるかなと。」

喧嘩をしても大丈夫ってことは、ちゃんと話が出来るってことなんだ。
私なんて、逃げてばかりだもんな。

「もう僕のことはいいでしょ。こんな話、誰にもしたことないのに、恥ずかしくなってきた・・・。」

見ると、藤田さんは耳まで紅くしている。

「そろそろ行こうか。もうすぐ部長も出社するだろうから。」