折角、竹内君から電話を掛けてきてくれたのに、
ギクシャクしてしまった。

白井さんの「竹内さんへ負担を掛けないで。」という言葉が、ずっと頭から離れなかった。

竹内君は「気にするな。」と言ってくれるけど、私は助けられてばかりで、竹内君を助けるような事は何も出来ない歯痒さを感じる。

白井さんなら近くで竹内君のサポートをしてあげる事だってできるだろう。

あんな風に強気な発言ができるのは、きっと自分に自信があって、周りからも一目置かれるような綺麗な女性に違いない。
会ったこともない「白井さん」という女性を声と話し方だけで、勝手に想像して嫉妬してしまう。

そんな女性に私が勝てる理由がない。

さっきまで感じていた仕事での充実感が、竹内君との些細なやり取りで吹き飛んでしまった。

恋愛は人をすごく幸せにしてくれたり、勇気を与えてくれたりするけど、それと同じぐらい、こうやって悩んだり、辛かったりする時間も増やしてしまう。

でも、結局、乱高下する私の思いとは裏腹に思い出すのは、あの夜の優しい囁きと温かく包んでくれた逞しい腕だった。

私はあの思い出と竹内君が残してくれたメモをお守りに、頑張るしかないんだと決意を固めた。